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サマーウォーズ感想
JUGEMテーマ:漫画/アニメ
  sw01
  ※リクエストがありましたので、遅ればせながら映画『サマーウォーズ』の感想を述べてみたいと思います。

 は、この映画を昨夏劇場で観ましたし、これまでにも何かと惜しみなく賛辞を送ってきました。その姿勢は今でも変わりません。これに先立ち、金曜ロードショーで放送されたものを見直しましたが、やはり名作と呼ぶのに相応しいかと思います。

 ただ、その感動を他人に説明しようとすると、ひどく難しいのです。「はたして自分が観たサマーウォーズは、他人が観たそれと同じなのか?」という疑念がむくむくと沸いてきます。この映画の掴みどころのなさとは、まさしくそういうものなのでしょう。見る人の立場や角度によって、映画の評価が大層変わる、そういうところがあります。

 さらに厄介なのは、そうした作品の文脈や構造自体が、今の時代の空気と不可分であるということです。一見、設定上の「緩さ」とも取れる作りが、同時に物語の多様な読みを可能にする。つまり、受け手の誤解や齟齬を取り込んであるということです(計算外かもしれませんが)。感想での不協和音は、その副産物です(まるで家族のようですね)。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 の物語の中心人物のひとりであり、齢90歳になるスーパーヒロインといえば、言わずとしれた陣内栄お婆ちゃんです。個人的には、2009年を代表する二大ヒロインだと思っています(もう一人は戦場ヶ原ひたぎさん)。

 電脳世界OZが危機的状況の陥った際、古くからの政財界の人的ネットワークを駆使し、背後から混乱を沈めてみせた手腕。初対面の主人公・健二に対する細やかな気遣いと人当たり、屈託のない笑顔、凛然とした厳しさ、気高さ、気品。どれをとっても文句ありません。「こういう人に会いたかった」と思わせるような、とても魅力的で素敵な人物です。
 人脈がチート過ぎるとか、90歳であんな元気な老人はいやしないとか。それを言うのは野暮でしょう。リアリティが損なわれるとの不満はあるようですが。どうも、その方向性での妥協の仕方にズレがあるようですね。

 もし不備や粗を言うのなら、例えば、OZのセキュリティシステムの設定とか、キーボードを使ったアバタの操作法がそうですね(細かいところでは演算や花札の指南もありましたが)。それと自衛隊の機材の無断借用だとか、商品のスパコンの持ち出しだとか。言いたくなる気持ちは分かりますが、だから何? です。

 まあ確かに、あのバーチャルな世界観は、かれこれ10年も前のものでしょう。時代錯誤と責められも仕方ありませんが。だったら戦国時代から続く陣内家は、現実的にどうなんだという話でもあって、そこにリアリティを求められてもなあ、という気はします。同様に、異常にバラエティ豊かな、陣内家の皆さんの人柄についてもそうです。

 それは虚構のレベルがどうのといったメタな話ですが。それよりは、むしろ「彼らがどう感じて何をしたか」という本筋に注目すれば、そのあたりの粗や不備は、正味どうでもよくなります。
 それらを帳消しにするような長所や美点が、物語のそこかしこに転がっていますから、正直全く気になりません。んまあ、多少おかしな点に目を瞑ることができれば、とてもスリムでよく出来た映画になるでしょうね、きっと。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 にとっての物語とは、設定より人物の感情や行動を求める比重が高いので、場面ごとの描写が充実していれば、特に不満はありません。その要望には、十二分に応えています。
 粗や不備と感じる箇所はいくつもあるでしょうが。僕にすれば、逆にどうして沢山ある長所に触れようとしないのか、それが不思議に思えます。

 例えば、栄お婆ちゃんがコネを駆使して、OZの脅威に対抗する場面ですが。そこで使用される小道具が年代物の黒電話だったり、手紙や写真を保管する入れ物が、色褪せたカルピスの箱なのを見ると、その丁寧な描写や役作りにこちらも痺れます。
 特に、この物語の主要三名(栄、健二、夏希)は、とても瑞々しく表情が描かれています。無言の見詰め合いから破顔して笑顔を見せる栄お婆ちゃん、詰問に目を泳がせる健二、曾祖母を喪い悲嘆の涙にくれる夏希。脇を固める陣内家の皆さんも、とても個性的で、演技や人物造形にブレがありません。

sw03

 は、これは数年前から懸念していることですが。もしかしたら「アニメやマンガの読み方が分からない人たちが増えているのではないか?」という疑念です。これは仮説に留めておきますが。
 それをどう言えば良いのか…。上述のリアリティの話にも繋がりますが、「絵から感情を読み解くことが苦手な人が増えている」印象があります。要は、中間的な表情が読み取れないので、音声や文章など言葉での説明がないと、場面の状況把握ができない人たちのことです。
 デフォルメや記号表現に幼い頃から慣れ親しんだことで、それ以外の理解力が身についてないのじゃないかと。見ていてそういう不安があります。

 例えば、劇中のある人物が放心状態でいるとします。そこから彼らは「何も感じ取れない」。無表情だし発話していないからです。だから、その人物が何を考えているのか皆目見当がつかない。だから場が間延びして退屈だと感じる。
 たぶん、教科書などの「絵解きの弊害」でしょうね。受け手が感じたり考える前に、先に言葉や記号で説明してしまっている。彼らがコメント付きの動画を好むのも、そうしたことが影響しているのかもしれません。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 画『サマーウォーズ』では、そのあたりの心理描写が、かなりきめ細かく施されていて、それを観るだけでも満腹ものです。従来の写実的な技法が活かされていて、アニメーションから原型が窺えます。劇場映画のクオリティは勿論ですが、テレビアニメでは省略しかねない部分まで、劇中で丁寧に描かれています。どうも、それが人によって未整理で過剰な表現に見えるのではないかと。
 物語設定に穴があっても、僕があまり気にならないように、そうした美術的に高度な仕様がなかったことになっているのを、実に不思議に思います。画面から情報が沢山与えられているのに、それに対する反応というのが殆どありません。

 ひとつ驚いたのは、あのデザインをもって「オタ臭い」という指摘があったことです。貞本義行氏のデザインは非常に洗練されていて、しかも現在に合わせて調整してあります。またOZのデザインも、かなりポップなものでしょう。エヴァやジブリ作品と比べても、オタ向けの作品とは思えません。
 これはかなり見解に相異があるなあ、と感じた次第です。おそらくそうした齟齬が至るところであるのでしょう。それが『サマーウォーズ』の語り口を難しくさせる理由です。

 これは以前から感じていたことですが、ファンが「作品にテーマや意図を求め過ぎる」傾向にあるようです。「内容がない」というのは、その最もたる言い草で、要は「自分が気に入るような道理や理屈がない」ということでしょう。作品に「自身の似姿を求めている」と言い換えて良いのかもしれません。

 これは僕の目には、とても奇異に映ります。何故フィクションにそういうものを求めるのか。それがないと、どうして「駄作」になってしまうのか。
 青年向けというのは、ある程度はそういうものでしょう。登場人物に自己を投影し、願望を仮託するような性質があります。ただ、虚構というのはそれだけではないし、それがなければ失敗という訳でもありません。

 これはかつて格闘技でも実際にあったことですが。等身大の自己像に拘ることで、物語のスケールを小さくする、ということがあります。受け手の標準的な視点に合わせるあまり、環境や人物の特殊性をスポイルしてしまう。それと同じ構図です。
 無暗な高望みをせず、手に届く範囲で欲望を満たそうとする。身の丈を超えるものを厨ニ病と退け、自我を保証するような理屈や世界観ばかりを求める――そういう傾向にあります。
 彼らにとって『サマーウォーズ』とは、その道理に反する映画なのかもしれません。フィクションをこじんまりと小さくしているのは、彼ら自身とも知らずに。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

sw02

 にとって『サマーウォーズ』とは、ヒロインの栄お婆ちゃんのことです。「大丈夫だよ。お前さんになら出来るよ」――彼女のそのひと言を味わうためにあるような映画です。
 この物語では、デジタルとリアルソースが二項で対立している訳ではありません。ただ緩やかに連動して、つかず離れず互いに繋がる機会を待っているだけです。大家族をモチーフに用いながら、そこに教訓めいたものは特にありません。皆で食卓を囲む気持ちがあれば、それで充分なのでしょう。そうした映画です。
 誰もが不安や欠落を抱えながら、それが何かを指摘できずにいた。「自己責任」論とは、対極にあるような映画です。その着想を娯楽大作として、正々堂々と細田監督が世に問うてみせたのが、映画『サマーウォーズ』における最大の価値です。それはエンターテイメントを通じた、ある現代の幸福論の教唆であり提示なのです。

 そして僕にとっても、メインヒロインである陣内栄刀自に出会えたことが、この作品における最大の恩寵であり福音です。
| アニメ | 12:00 | comments(14) | trackbacks(0) |
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コメント
私の不躾な質問に真摯に答えていただき、誠にありがとうございます。
面白さを言葉で説明するのって難しいですよね、お手数おかけして恐縮です(^^;

個人的には設定の粗とかは気になりませんでした。
それを気にさせないストーリーテリング、勢いがあればOKで、それがサマーウォーズにあったかどうかは各人の判断に委ねられるところでしょうか。

>皆で食卓を囲む気持ちがあれば、それで充分なのでしょう。そうした映画です。
あーなるほど腑に落ちました。
サマーウォーズという作品は、この言葉に集約されてる気がします。
本当にありがとうございました!
| クワイ | 2010/08/17 10:52 PM |
どうもです。今の状況で言葉にできるのは、この範囲です。理屈が自分用の域を出ないので、ご期待には添えなかったかもしれませんが。

このSWはテクニカルで、僕にとっては非常にオースドックスな長編アニメです。昔馴染みのテクニックを多用してあります。それだけに、あまり正当に評価を受けてないことに一抹の歯がゆさがあります。

ただ、その表現が上手く伝わらないこと、そこも含めてこの映画の真価とも言える訳です。異なる文化の世代間を串刺すには、そうした「ゆるさ」が不可欠だったということです。

ただ、何ですかねえ…アニメやサブカルに「教訓や道徳や成長」を求める人が、どうも多すぎますねえ。それは現実でやることじゃないのかなあ。
| ※管理人 | 2010/08/18 7:28 PM |
批判してる人は「教訓や道徳や成長」ではなく
それを引っ括めた「リアリティ」を求めているんです
ストーリー、展開の不自然さが半端ない
それでも満足なのが管理人さんですけど

アニメやマンガの読み方ねぇ、
娯楽の楽しみ方なんてそれぞれです、楽しめればいいんですから
あなたは楽しめた?それは良かった
だけど、自分の楽しみ方が正義?

私は創作の世界でのリアリティが欠如してない作品が好きです
そんな作品に出会えたらとても楽しめます
だからといって、私の楽しみ方が正しいとは思いません
管理人さんの「楽しみ方の決めつけ」は傲慢すぎやしませんか
| 3時 | 2010/09/06 6:32 AM |
まあ、落ち着いてください。
>自分の楽しみ方が正義?
これは無いですね、まったく。
というか、できる限り他人の楽しみは尊重してきた心算ですが(不可解なものも含めて)。
「教訓や道徳や成長」というが伝わらなければ、「自分の理想や似姿」でも構いませんよ。要は、作品には作品の独立性があると言いたかったのです。
誤解されているようですから訂正しますが、「楽しみ方の決めつけ」は普段からやりませんし、自分の主義には全くそぐわないことです。
| ※管理人 | 2010/09/07 1:15 PM |
ありゃ、そうなんですか
何か壮大に勘違いをしていたようで、申し訳ない

リアリティ云々は一応理解はされてるんでしょうか
とりあえず私はサマーウォーズが好きじゃありません、
空想物語は嘘臭さを消すために現実に似せて作るワケですが
この映画は説明不足というか、説明が不要と言わんばかりに
不自然な部分を無視して話をどんどん盛り上げていく
これがちょっと視聴者を馬鹿にしてるんじゃないかなぁと思うのです

この辺に対してはどう思われますか?
| 3時 | 2010/09/07 8:39 PM |
>説明が不要と言わんばかりに
たぶんネックになっているのは、この部分なんでしょう。僕にもはっきりしたことは言えませんが、40代半ばのアニメ観であれば、あの方法論でも通じる筈なんですよ(見る人に拠りますが)。画面に既視感がありますから。
SWという物語が、謂わば全世代を対象に製作されていて、それで構成上どうしても不自然にならざるを得ない面があるんですよ。長所も沢山ありますから、僕はあまりそこに重点をおかずに見て欲しいなあ、と思っているんですけどね。
| ※管理人 | 2010/09/07 9:59 PM |
長所の理解度が低い世代な上に、
自身の価値観では短所がどんどん見えてくる。
そんな異質とも言える作品なので
認められないのは当然といえば当然ですよね。

「リアリティの無いネタ作品」なんていう見方なら
十分楽しめるし、認めることだってできたと思います。
でもネタではなく、短所を短所だと思わない人達が
(管理人さんではなくて)この作品を絶賛していた場合は
理解なんて程遠いですね、はい。

単純に物語にリアリティを求める比率が大きいだけなんですが。
ストーリーの展開上仕方ない偶然ではなく
単に娯楽に徹するための偶然は
素直に楽しめないんです、物語構成の邪道とすら思えます。
| 3時 | 2010/09/08 11:30 PM |
つまり「ツメが甘い」ということですか。僕にすれば、SWとは「立体の正多面体のように綺麗な作品」に見えますけどね。
ひとつ、「リアリティ」という言葉には、複数の切り口があります。抽象的な意味もあれば、具体的な表現手法もあります。そこは区別された方が宜しいかと(議論の混乱を防ぐために)。それと実は、これって人間の認識の問題でもありますね。絶賛する人と、そうでない人が距離がどうしても縮まらないのは。脳で処理をする回路がどうも違うような気がします。
| ※管理人 | 2010/09/09 1:39 AM |
そうですね、リアリティを管理人さんの言う
キャラ描写や小道具などで考えたら
リアリティのある作品、でも正しいと言えます。
大体は私が主張している物が分かってもらえているようなので
特に定義しないで話を進めていましたが、必要でしたか。

SWの評価に大きな溝があるのは、この作品を評価するにあたって
比較できる物がとても多いからな気がします。
今までにない作品だから、自分の頭で咀嚼すると変な味がする
甘いのか辛いのか、好き嫌いが少ない人には美味しくて
好き嫌いが多い人は美味いけど不味い、という評価になるような。
お互いに理解を深めても嗜好の違いは理解の限界点を超えていて、
SWはそんな、色んな嗜好に突き刺さる作品なんでしょうかね。
(もちろん嫌いに突き刺さる場合もありますけど)
| 3時 | 2010/09/10 12:46 AM |
>この作品を評価するにあたって比較できる物がとても多いからな気がします。
これについては同意です。まるで試験紙のような作品ですね。

リアリティというのは、個人によって受容の振り幅が大きいものですから。当然、人によって受け止め方に違いがあります。で、その個人的な事情を除けば、それは共有された表現様式や技術論に行き着きます。形而上なリアリティもあれば、映像表現の、あるいは人間心理や行動学的なリアリティもあります。
とても便利な反面、ややこしい言葉なんですよ。ですから、もしそれが「私にとってのリアリティ」の話であれば、それは結局個人差の問題に収斂してしまいます。僕が最初の質問に戸惑ったのはそれです。「これはどのレベルのリアリティの話なのだろうか?」と。
| ※管理人 | 2010/09/10 10:34 PM |
>人脈がチート過ぎるとか、90歳であんな元気な老人はいやしないとか。それを言うのは野暮でしょう。
>細かいところでは演算や花札の指南もありましたが

ストーリー(筋書き)のリアリティです、この辺も受け取り方の違いなんでしょうかね。
「サマーウォーズ たまたま」で検索して貰えれば分かりやすいかと思います、
ストーリーが破綻するほどに欠点が多いのであって、私の場合細かいとはまた違うので・・
(90歳で〜のくだりについては特にツッコミは無いです)
| 3時 | 2010/09/11 7:20 AM |
ごめんなさい。
先に誤っておきますが、「あまりにも取るに足らない」感想です。言葉がありません。本当に御免なさい。いくつか拾って読みましたが、「これでは話が全く通じないだろう」ことは理解しました。
この件は、ここまでにしておきます。失礼。
| ※管理人 | 2010/09/14 1:47 AM |
あらら・・そうなんですか、
見事に着眼点が違うんですね。

批判派を理解した上での評価ではなく
理解出来ない上での評価、なら
交わる事はないでしょうからねぇ。
| 3時 | 2010/09/16 4:35 PM |
こちらでははじめまして。


本日、地元の児童館での本作品の観賞会を小中学生に
混じって観ました。

時代を感じさせました。  道徳的漫画です。
| 伊澤 忍 | 2014/08/02 5:34 PM |
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